『ケータイを持ったサル』

正高信男『ケータイを持ったサル:「人間らしさ」の崩壊』(中公新書 2003)を読む。
京都大学霊長類研究所で教授を務める著者が、サルの社会性や家族構造、群れの行動原理などの研究の見地から、人間の社会行動原理に分析を加えている。
週刊誌のタイトルと見紛うような、「マザコン進化史」「子離れしない妻と居場所のない夫」「「メル友を持ったニホンザル」「『関係できない症候群』の蔓延」「社会的かしこさは四〇歳で衰える」「そして子どもをつくらなくなった!」の6章で構成されている。
サルは基本的に群れから出ず、群れの中だけの生活で一生を終える。著者は最近の日本人もそうしたサルの生活スタイルに回帰していると結論づける。母子密着、子離れできない母、家庭的な会社のムードから逃れられない父、言語以前のコミュニケーションの終始する女子高生、親という責任を引き受けたくない若者などをサルの群れの原理から説明を加えている。途中比較行動学研究の調査データの話も出てくるが、公共的な世界に生きることで育まれる真の人間らしさの崩壊のあらましが分かりやく述べられていた。
久しぶりに、新書一冊を一気に読むという経験をした。目が疲れた。

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