松下和夫『環境政治入門』(平凡社新書 2000)を読む。
「環境」というと70年代までは、国土開発の一環という位置づけしかなかったが、80年代以降環境問題が政治問題化してサミットや国連で議論でされるようになって久しい。環境問題は地球規模で進行しながらも、その被害は直接国民の身に降り掛かり、その解決策は家庭での細かな配慮に還元される部分も多いということで、非常に多岐にわたる行政判断が求めれる分野である。著者はそうした「環境政治」について以下のように定義づける。
一般的に、法律は、社会のコンセンサスを反映したものであるべきだし、その時々の社会の常識を制度化したものといえる。その意味では環境行政や環境政治における透明性と民主化の問題は、ひとり環境分野だけの問題として解決できる課題ではなく、社会全体として取り組んでいくべきテーマであった。行政の透明性に関してこのように考えてみると、日本の環境行政が他の行政分野と比べてとくに遅れていたというよりは、日本社会の行政や政治の風土、および構造がアメリカとっは相当に異なっていたことの反映というべきかもしれない。ただ環境行政がほかの行政分野よりも直接に住民運動と接していたり、情報公開の課題と直面する機会が多く、それだけに独自の工夫と取り組みを迫られてきたという面もあったことは指摘しておかねばならない。
そして、
アジアではこれまで域内での研究機関や民間団体相互の交流が乏しかった。むしろ植民地時代の遺産として旧宗主国との関係が強かったり、戦後はアメリカ主導による交流活動が中心になりがちであった。しかし域内での貿易と投資の流れがますます拡大し、経済的相互依存関係強まるなかで、域内の知的交流を深め、アジア地域の共通課題である環境と開発、特に持続可能な開発につき理解を深めることがますます重要な意味を持ってくる。