『大学サバイバル』

古沢由紀子『大学サバイバル』(集英社新書 2001)を読む。
急激な少子化による生徒募集に苦しむ私大のみならず、小泉内閣の「聖域なき構造改革」によって独立採算を迫られる国公立大学、また、大学への格上げを切望する短大や高専の学長などの「大学」を巡る状況について、読売新聞の記者である著者が自分の経験を相対化しつつ、わかりやすくまとめている。
著者は、昨今の大学について、「大学の種別化、機能の分類といったことが自主的に行なわれていかないと学生にとっても社会にとっても無駄なコストが大きすぎる」と現状維持に批判を加える。そして、「エリート教育」や「技能育成大学」「生涯学習対応型大学」「社会人教育大学院」などの実践例を挙げ、大学内部だけではなく、大学を捉える社会の視線自体が多様なものになった以上、「社会への貢献」を前提とする大学も多様化せねばならないと主張する。まとめにすらならない結論である。しかし、教育論に共通する事であるが、各世代、男女、文系理系、国公立私立……、人の数だけ大学に対する思いはばらばらである。各人の経験に基づく極めて主観的な「あるべき大学像」から、いかに脱出できるかと言う点に、大学改革の鍵があるようだ。

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