伊藤左千夫短編集『野菊の墓』(新潮文庫 1955)を読む。
一般に作者の代表作として知られる表題作の『野菊の墓』は、ちょうど今から100年前の1907(明治39)年に発表された作品である。一途に思い続ける彼女が突然の病で死んでしまい、彼女を思う気持ちだけが永遠に主人公の心に残り続けるといった「主観的な、感傷的な、失恋小説」であある。言葉は少し難しいし、保守的な恋愛観がモチーフとなっているが、『セカチュー(世界の中心で、愛をさけぶ)』や今のケータイ小説のような初々しさや爽やかさを感じる作品であった。『現代日本小説大系』(1950)の中で、中野重治氏が「人生に対して激情的な人々によって『野菊の墓』は読み続けられる可能性を持つと私は考える」と述べているように、「純愛」はいつの世も若者にとって大きなテーマとなるのであろう。(ずいぶん老成したものの言い方であるが)
『野菊の墓』
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