『癌:患者になった5人の医師たち』

黒木登志夫他『癌:患者になった5人の医師たち』(角川Oneテーマ21 2000)を読む。
癌の研究や治療で第一線に立つ医師たちが、実際に自身が癌になった経験を語る。彼らは癌の治療や抗ガン剤の副作用についての知識や経験は豊富でも、患者としては全くの初心者である。実際に癌と判明してうろたえたり、抗ガン剤の副作用の苦しみを経験する中で、患者の視点に立ったインフォームドコンセントの方法や病室のあり方について考察を加えている。
時には自分と180度違う立場で自らの仕事を振り返ってみることも必要だと感じた。
本書の中で、ある医師は次のように述べている

入院生活を体験して、患者さんにとっては病棟こそが「生活の場」であるといことも痛感しました。入院している患者さんにとっては病室が生きる場、生活の場、寝たきりの人にとっては畳一畳ほどのベッドの上が生きる場になります。
とかく私たち医療者は、病室をただ単に医療や看護を行う場であるという意識が先行して、患者さんがそこで生活しているという意識をなかなかもてません。入院患者さんがそこにいるという程度にしか見ていないのです。病室のベッドで生きている、ときにはそこで人生の最後の仕上げをしているのだ、という気持ちを忘れがちです。ベッドの上で何日も生活した経験がない健康な人には、実感が湧いてこないのです。しかし、私は医療者として、このことを絶対に忘れたくないと思っています。

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