渡部行『「青森・東通」と原子力との共栄:世界一の原子力平和利用センターの出現』(東洋経済新報社 2007)を読む。
産経新聞や日本工業新聞で原子力発電の提灯記事を書き連ねてきた著者が、青森県内の東通原発や六ヶ所原子燃料サイクル施設、むつ市使用済燃料中間貯蔵施設、大間原発を礼賛するという内容である。電力会社の会長や自治体の首長、経産省大臣などのインタビュー記事もたくさんあり、際限ない漁業補償費の積み上げや、自治体の祭りの手伝いや無形文化財の保護まで社員が駆り出される実態、2000年代以降の地球温暖化防止の流れの中で息を吹き返した原発政策など、原発を誘致する際の莫大な補助金の流れの一端が理解できた。
現在、むつ市の中間貯蔵施設以外は全てストップしたままであり、原発建設によって生活を破壊された人たちへの補償も滞っている。官民一体となった大掛かりなプロジェクトは一度動き出すと誰にも止められず、誰も責任を取らないものなのである。
先日自民党幹事長のポストを得た二階俊博氏であるが、経済産業大臣当時、自信満々に原子力政策の正しさを主張し、国策としての原子力を強制していくという発言を行っている。3.11当時は民主党政権だったので、直接自民党の誰々を追求するという報道は少なかったが、当時の主管大臣としての責任はどこへ行ったのだろうか。