チャン・イーモウ監督『英雄(HERO)』(2002 香港=中国)を春日部駅東口にあるロビンソン百貨店まで観に行った。
テレビCMを見ている限りでは『マトリックス』ばりのCGが目を見張るが,内容的には極めて古典的な人間感情がテーマであった。天下統一に邁進する巨大国家「秦」に翻弄される小国「趙」に住む剣士の話である。秦王と刺客無名との間に交わされる物語は二転三転していく。その中で秦による天下統一を歴史的に正当な流れと見るのか,否かを巡って,男女の恋愛感情が揺れる。また,その中でたった一本の剣によってまさに歴史が動いていくダイナミズムと,いわばそうした歴史の大河の被害者ともなる秦王の孤独が明かになっていく。映像よりもその内容のスケールの大きさに脱帽した。中国映画恐るべしといった感だ。
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『踊る大捜査線THE MOVIE 2:レインボーブリッジを封鎖せよ!』
本広克耕監督『踊る大捜査線THE MOVIE 2:レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003 東宝)を観に行った。
テレビ版も前作の映画も観ていないせいもあってか,楽しむことが出来なかった。狙いなのだろうが,いかにもテレビ番組的などたばた劇が展開され,官僚主義に守られた警察組織vs人間味溢れる現場警官というお定まりの構図で話は進んでいく。内容的にどうこういう代物ではない。地方在住の方を対象とした,観光地お台場の宣伝番組といった趣だ。フジテレビ周辺を逍遥しながら,「この場所映画に出てたよね」と楽しく談笑しながら写真を撮って土産話とするにはうってつけの内容である。
□ 映画『踊る大捜査線THE MOVIE 2:レインボーブリッジを封鎖せよ!』公式サイト □
『ターミネーター3』
ジョナサン・モストウ 監督・アーノルド・シュワルツェネッガー主演『ターミネーター3』(2003 米)を千葉県野田市にあるスーパーのジャスコに入っている映画館へ観にいった。
前作を見ていないので話しのつながりが理解出来なかったが、話の内容自体は分かりやすいものであった。徹底した最新のVFX技術が用いられているということだが、すでにどこからがCGでどこまでが現実の演技なのか見分けることはできない。アニメや漫画のように、変身したり人を投げ飛ばしたり首がもげたりと、もはや人間が想像できない映像はないというレベルまで達している。格闘シーンなどは格闘ゲームやアニメ「ドラゴンボール」のような重力と体力を無視した肉弾戦であり、これまでの格闘シーンとは一線を画している。
しかし話の筋自体はきわめて古典的なSFストーリーとなっている。システムの反乱に対し、ヒューマンロボットが立ち上がるという展開は手塚治虫の「鉄腕アトム」や永井豪の「デビルマン」を彷佛させるものがある。おそらくアメリカにも同種の物語が多数あるのだろう。「マトリックス」同様に、コミック的な内容に現実離れした映像を加えるという手法は、今後10年近くハリウッド大作映画の主流となっていくだろう。
『お引越し』
先日相米慎二監督『お引越し』をビデオを借りて観た。
ここ数年来、何回も観ているものであり、ストーリーはもちろんのこと台詞まで覚えてしまっているのに、観る度に感動が形を変えてやってくる。当初は「漆場漣子」役を演じる田端智子さんの無垢で迫真に迫る演技に魅了されたが、何度か観ているうちにラストシーンにおける一人の少女の成長の姿の意味について考えるようになった。ちょうど宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』とテーマといい、非日常的な舞台設定といいそっくりである。ある夏の日の思春期に差しかかる少年少女の心の成長を扱った作品は、スティーブン・キング原作の映画『スタンド・バイ・ミー』など洋の東西を問わない。この『お引越し』で描かれる少女の成長は、単に大人の世界をかいま見たとか、異性の魅力に触れたとか通り一遍の評論では語り尽くせない。竹林を彷徨い、もう一人の自分を見つめる自分と出会うという極めて哲学的なアイデンティティの確認作業が一人の少女を通じて行われている。
『二重スパイ』
本日封切りされたキム・ヒョンジョン監督映画『二重スパイ』(2003 韓国)を観に出かけた。
『マトリックス・リローデッド』と同時に公開されたためか、残念ながら、館内の観客は疎らであった。
背反する国家と愛情に悩む主人公の姿とスパイ映画にありがちなモチーフであったが、民族意識と統一の問題について少し考えている時期だったので楽しめることが出来た。70年代後半から80年代にかけて日本が一定の平和を謳歌している時期に、峻烈な同民族同士の憎しみ合いを強制されてきた民族の悲哀を改めて実感した。前作『JSA』が友情と国家というテーマだったのに対し、今回は愛情と国家であったためか、陳腐な恋愛映画の雰囲気が根底に流れてしまったのは残念だった。韓国脱出後のラストシーンはほぼ展開が読めてしまった。





