地理」カテゴリーアーカイブ

「脱石炭 46カ国・地域合意 日米中印は不参加」

本日の東京新聞朝刊より。
国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議で、石炭火力発電の段階的廃止や新規に建設しないことで、先進国では2030年代に、世界全体では2040年代に廃止することで合意したということだ。COP26には100カ国以上の国・地域が参加しており、全体でどれくらいの賛同を集めたのかは不明だが、「石炭火力発電が地球の気温上昇の最大要因」だとのメッセージはしっかりと受け止めたい。

石炭は主に古生代の植物が地中深くに埋没し、地熱や地圧を受けて生成した有機物である。古期造山帯で多く産出されるが、それ以外の地域からも産出し、開発途上国の電力エネルギーを支えている。しかし、石炭は植物由来のため、燃焼すると二酸化炭素だけでなく、大気汚染の原因となる窒素酸化物や硫黄酸化物が必ず排出される。

日本では現在も火力発電所の建設が進んでおり、昨年2020年の6月にも広島県竹原市で世界最高水準の高効率な火力発電所が運転を開始している。日本がなぜ石炭にこだわるかというと、石炭はオーストラリアから安価で安定して輸入できるのに対し、原子力発電は国内世論の批判に晒され、また天然ガスは輸入ルートが不透明であるためだ。

太陽光や地熱、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーの技術開発、それらの普及に向けた国家戦略に異論はない。欧州の先進国は、安定陸塊で地震が全くないので、原発への依存度も高く、天然ガスの供給ルートが安定しているため、容易に脱原発を宣言できる。しかし、アフリカや中米の国はまだまだ石炭に頼らざるを得ないのが現状である。

地球温暖化に逆行するという意見もあるが、私は、今回の脱石炭の合意に加わることができない開発途上国向けに、日本の高効率な石炭火力発電の技術を活用し、非効率な石炭火力発電所をリプレイスするべきだと考える。地球温暖化対策は先進国を中心に議論されているが、貧困に喘ぐアフリカや中米諸国では安定したエネルギーが不可欠である。21世紀半ばを目処に、開発途上国の経済発展を支えるという目的に限って、石炭火力発電の研究を進めていくことが必要である。

「ロシア・ベラルーシ統合加速」

本日の東京新聞に、ロシアのプーチン大統領とベラルーシのルカシェンコ大統領の間で、両国の経済や軍事面の統合を加速させる合意ができたとの記事が掲載されていた。
ベラルーシといってもピンと来ない生徒が大半であろう。両国ともロシア正教会であり、ベラルーシ語はロシア語の方言ようなもので、文字も文法体系もほぼ同じである。また両国とも独裁的な大統領が長期にわたって権勢を保っている。

ベラルーシとロシアが統合したとしても何ら異論はないが、ウクライナ情勢に及ぼす影響が大きく、反ロシア感情が強いウクライナが危機感を募らせるであろう。ウクライナを守る上では、ベラルーシの統合は地政学的なバランスを崩す要因となろう。

「AIが果樹農家 お助け」

本日の東京新聞朝刊に、スマホのアプリやAIを活用したスマート農業の実例が紹介されていた。農薬の投入や収穫時期の見極めが難しい野菜や果樹栽培などで、豊富なデータを活用した効率的な収穫を目指すという実験である。こうしたスマート農業はオランダが世界の最先端を行っているが、日本の技術もなかなかのものである。

これからの農業は、土や虫、肥料といったアナログなものから、リモートでデータを活用したデジタルなものへと移行していくのであろう。さあ、皆さんこの時流をどう考えますか。

「『原潜』拡散の危うい潮流」

本日の東京新聞朝刊に、中央大学の目加田説子教授の原子力潜水艦の拡散への懸念を示したコラムが掲載されていた。
記事を読んでもピンと来ない人が多いだろう。先月アメリカ、イギリス、オーストラリアの3カ国の首脳が、中国の拡張を抑止しインド太平洋地域の安定と安全を維持するため、「AUKUS」と呼ばれる安全保障の枠組みを発表した。3カ国の一体展開で、中国の「一帯一路経済圏構想」をインド太平洋地域で抑え込もうという戦略である。大洋が舞台となるため、米英は豪州に原子力潜水艦の技術を供与し、機動的な軍事展開を可能としている。

授業中に何度か、中国がアフリカを市場とするために、インド洋への足掛かりを作っているという話をした。ミャンマーやアフガニスタン、スーダンなどの軍事政権を中国が後押ししているのも、全て中国の経済戦略の一環と捉えることができる。そうした膨張を止めない中国に対する包囲網に、米英豪印だけでなく、日本や韓国、台湾などの東アジアの国も巻き込まれている。また、中東でも中国と歩調を合わせるイランに対し、サウジやUAEとイスラエルが手を組み対立を深めている。

少し話はずれるが、2002年に、ハワイオアフ島付近で愛媛県宇和島水産高等学校の練習船「えひめ丸」が、米軍の原子力潜水艦に衝突沈没し、高校教員・生徒9名が亡くなるという事件があった。事故の原因は米原子力潜水艦に民間人が搭乗したこともあり、半分遊びで海底からの急上昇体験を実施したところ、海上にいた実習船に不注意でぶつかったというものだ。当時のニュースでも、原子力潜水艦の危険性が指摘されていたことを記憶している。
ちなみに、当時の首相は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長を務めていた森喜朗である。この「えひめ丸事故」の第一報を知ったのちもゴルフを続けて、責任ある対応を取らなかったとして辞任に追い込まれている。

非核三原則を表向きは堅持している日本では、すぐに原潜の配備とはならないという向きもあろう。しかし、中国の領海侵犯や台湾を廻る緊張の高まりで、日本でも原潜配備の声が出てもおかしくない状況であることは、これからの授業でも伝えていきたい。