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「市区町村、夜間との比較」

本日の東京新聞朝刊に市区町村ごとの昼夜間人口比率に関する記事が掲載されていた。
記事中からそのまま引用するが、昼夜間人口比率とは「住んでいる人の数を夜間人口、通勤や通学で行き来する人を加減した数を昼間人口とし、夜に対する昼の比率を表」したものである。

一般的に、ビジネスや商業が集中する中心業務地区(CBD)では昼間の人口が高く、住宅地の多い郊外で夜間人口の方が多くなる。東京都千代田区は皇居を取り囲む東京都の中心地であり、実際に住民登録している人口は67,500人である。つまり、昼にはその17.5倍の120万人近い人たちが近隣の自治体から移入してきている。千代田区のイメージが湧きにくい人は下掲の地図をみてほしい。皇居を取り囲む地域で、国会や官庁だけでなく、有名デパートや大型商業施設、大学、専門学校が集中している地域となっている。

ただし、スケールの取り方によって見方が変わり、都道府県単位と市区町村単位で数値が異なる点に注意したい。市区町村レベルでみると、同じ23区郊外の足立区や北区、練馬区、大田区などは中夜間人口比率が100%を割っており、都心部の千代田区や港区、新宿区、渋谷区などに移入していることが伺われる。都道府県レベルで見ると、埼玉県、千葉県、神奈川県から東京都に移動していることが分かる。埼玉県も県レベルで捉えると昼夜間人口比率は0.88だが、商業施設が集まっているさいたま市大宮区だけでみると1.38と高い比率となっている。

「九州・山口に線状降水帯」

本日の東京新聞夕刊に、前線や低気圧の影響で特定の地域に次々と積乱雲が発生し、線状に伸びた地域に大雨を降らせる線状降水帯が記事になっていた。2014年の広島県での集中豪雨から注目されるようになった気象用語である。

予報が難しく、一気に災害級の降水を降らせるやっかいな存在である。2、3年前の早稲田大学の入試問題でも出題されている。

「北マケドニアがEU加盟交渉へ」

本日の東京新聞朝刊に、北マケドニアの記事が掲載されていた。旧ユーゴスラヴィアのスラブ人の国であり、埼玉県(733万人 2022年4月現在)の人口の3分の1の208万人の小さな国である。
1991年に旧ユーゴから独立した際はマケドニアという国名であったのだが、マケドニアは元々ギリシアを意味する言葉なので、ギリシアが猛反発したため、2019年に「北マケドニア」に国名を変更している。

さてEU加盟交渉が始まるとのことだが、すんなりとはいかないであろう。北マケドニアの一人あたりのGNIは約5,720ドル(2020年)である。隣国ブルガリアの一人当たりGNIが9,630ドル(2020年)なので、半分ほどである。

授業の中で扱ったが、高い賃金を求めて、一人当たりのGNIが低い国から高い国へと出稼ぎの労働者が転入する。一方で、安い人件費を求めて、一人当たりのGNIが高い国から低い国へ工場が転出していく。旧東欧諸国よりも格段に安い労働力が確保できるので、もしEUに加盟したらドイツやフランスの工場が進出してくることだろう。国内の産業の空洞化が一層進んでしまうので、交渉反対の声が強くなるであろう。

「コメ被害抑制へ各地懸命」

本日の東京新聞朝刊に、気候変動を受けてコメやブドウ、ナシなどの国内農作物の高温対策が本格化しているとの記事が掲載されていた。幸い日本は南北に長い国なので、水温管理や害虫駆除、品種改良等で、適応策は比較的取りやすい。日本の米は主に冷害対策を視野に品種改良を行ってきたので、高温対策の歴史は浅い。しかし、高温に強い品種は数多くあり、いずれは九州のブランド米が北海道で生産されるのであろう。

「欧州酷暑」

 本日の東京新聞朝刊に、南欧スペインで最高気温が45度を超えて、山火事が頻発しているとの報道があった。地理の先生っぽく解説を加えてみたい。ちょうど1学期の期末考査で出題したとこである。

地中海周辺は夏に亜熱帯高圧帯が北上してきて高圧帯に覆われるCs気候区分に位置する。スペイン内陸の首都マドリードの雨温図を見ると分かるが、夏になると、ひと月の降水量が10mm程度にまで低下する。埼玉の1月の降水量が50mmほどなので、その少なさが何となく理解できるであろう。そのため、地中海周辺では夏に、皮の厚いオリーブやレモン、オレンジ、もしくは水分をたっぷりと蓄えたブドウやトマトが生産されている。

ちなみに、マドリードは7・8月の平均気温が22度を超えるため、大学レベルのケッペンの気候区分では、最暖月22度以上のaを加えて、Csaと表記される。

スペイン・マドリードの雨温図

一方の日本だが、先日7月12日夕方から13日未明にかけ、埼玉県内では猛烈な雨が降った。埼玉県・鳩山町では、12日午後10時半までの6時間の降水量が観測史上1位となる360ミリに達っした。これは平年の7月1か月間に降る雨の2倍以上にあたり、 川が増水し、車が流されたり、家屋が床上浸水する被害も出た。特殊な事例だが、スペインの年間降水量が400mmを超える程度なので、ほぼ半日でスペインの1年分の降水量を記録したことになる。

こうした地中海性気候は北緯・南緯40度付近で、偏西風の影響を受ける大陸の西側のみに位置する気候区分である。地中海周辺だけでなく、北米大陸の西側やアフリカ大陸南端、オーストラリア大陸南西部、南米大陸の南緯30-40°付近にもある。