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「基地のない沖縄へ 踏ん張って戦う」 辺野古抗議で拘束 目取真さんが講演

本日の東京新聞朝刊に、目取真俊さんの講演の記事が掲載されていた。「今後も拘束されることがあるかもしれないが、組織的な支援態勢をつくり、権力の弾圧をはね返す強さが必要だ」という目取真さんの言葉に、運動の仲間の結束の強さをひしひしと感じる。本日の朝刊は他にも壕(ガマ)の平和教育や小林節氏らが立ち上げた政治団体「国民の怒りの声」の記事、大学の非常勤講師の待遇など読みどころが多かった。

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 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)移設への抗議活動中に拘束、逮捕された沖縄県在住の芥川賞作家、目取真(めどるま)俊さん(55)が十四日夜、東京都内で講演した。目取真さんは「今後も拘束されることがあるかもしれないが、組織的な支援態勢をつくり、権力の弾圧をはね返す強さが必要だ」と訴えた。

 目取真さんは、日本の米軍基地の多くが沖縄にある現状について「沖縄が基地を誘致したわけではない。沖縄は基地のおかげで潤っているというような言説があるが現状は違う。基地がない方が沖縄の観光のためになる」と語った。

 目取真さんは四月一日、米軍キャンプ・シュワブ周辺の立ち入り禁止区域に許可なく入ったとして、米軍に約八時間拘束された。その後、中城海上保安部に逮捕されたが、那覇地検は翌日、処分保留で釈放。目取真さんは今月十二日、拘束は適正な手続きを取っておらず違法だとして、国に慰謝料など約六十万円を求め、那覇地裁に提訴した。

 講演で目取真さんは「拘束中に弁護士との接見を何度も求めたが聞き入れられなかった。治外法権の怖さを、身をもって体験した」と振り返った。「努力を怠ればもっと悪い状況は着実にやって来る。踏ん張って戦わないといけない」と決意を新たにした。

 講演会を企画したのは、精神科医の香山リカさんと作家の中沢けいさんらで、講演後に「路上で抗議する表現者の会」を設立。香山さんは「不当に逮捕された表現者を支えるネットワークをつくりたい。萎縮ムードに一矢報い、表現者が政治的発言を自由にできるようにするのが私たちのゴールだ」と述べた。

「日米安保 考える好機に」

米大統領候補で共和党候補の指名を確実にした不動産王ドナルド・トランプ氏が在日米軍基地を巡って、過激発言を繰り返している。「その国を守っているのだから、経費すべてを駐留国側に負担させるべきだ」「財政赤字を抱える米国に世界の警察官となる余裕はない。自動車産業で経済大国になった日本を、なぜ米国の経費で守らなければならないのか」。2004年の米国防省資料によると、日本は条約上の義務を超えて米軍の費用を負担する「思いやり予算」を支出しており、日本の負担は既に在日米軍経費全体の74.5%、基地がある自治体への交付金などを含めると7000億円を優に超える額に達している。

本日の東京新聞朝刊に、ちょうど自分が考えていたことと全く同じ内容のコラムがあった。まとめるのも面倒なのでそのまま引用しておきたい。

 この要求は妥当なのか。元外務省国際情報局長の孫崎亨氏は「妥当かどうかを考える前に、日米安保体制を見直す、いい機会。トランプ氏はその主張を続けてほしい」と話す。
 「米国には『日本の安保ただ乗り論』という誤った認識もあるが、日本駐留は米国の世界戦略の一環。『それならお引き取りを』と言われて困るのは米国だろう」と指摘する。
 南沙諸島で中国が存在感を増しているが、日本から米軍が撤退しても東アジアの力関係は崩れないか。
 孫崎氏は「南沙で日本は当事国ではなく、東南アジア諸国連合(ASEAN)が主体的に取り組むべき問題だ」と解説。その上で「尖閣諸島は、国交正常化したときに日中両国は領有権の棚上げで合意した。それに戻ればいい。北朝鮮は日本が攻める意思さえ示さなければ、問題は起こらない」と推測する。
 安保問題に詳しい前泊博盛・沖縄国際大学教授も「米国に過度に依存している日本の安保や外交を議論するよい機会になる」とトランプ氏の主張を歓迎する。
 「日米安保条約をよく読めば、米国が必ずしも日本を守る必要はなく『片務』とはいえない。日米地位協定で米国が負担すべき経費を、実際には日本が肩代わりしている。現状の日本側の負担が妥当なのか、日米安保が本当に効果的なのかを考えるべきだ」
 ただ、トランプ氏の日本の核武装容認発言には「アジアを不安定化するだけで賛同しえない」と言う。
 とはいえ、「日米安保」といわれると思考停止に陥りがちな日本の事情を指摘しながら「トランプ氏が自分の頭で考えて、素朴な疑問を言葉にしていることは評価すべきだ。米大統領にふさわしい人物とは思わないが、見習うべきところはある」と語った。

「給付型奨学金 若者よ、声を上げよう」

以下、本日の東京新聞朝刊の社説より引用。大変丁寧に奨学金の問題を報じている。日本学生支援機構の組織の在りようにもメスを入れて欲しい。
先ほどウィキペディアで調べたところ、学生時代に足繁く通った新宿区・下落合にあった「内外学生センター(学徒)」も一部の事業を除き、日本学生支援機構に吸収されたようだ。学徒で紹介された数々のアルバイトも今ではいい思い出である。

 学費を心配せずに、大学に行けないか。もしそうなれば、いわゆる“貧困の連鎖”を断ち切る大きな一助になる。次世代に借金を背負わせ、学びの門戸を狭めていては、日本の未来はひらけまい。
 だれにでも等しく教育を受ける権利を、憲法は保障している。それなのに、家庭の経済力が乏しい若者たちには、いわば学ぶ機会と引き換えに、多額の借金を強いるのが国の奨学金制度である。
 これに対し、与野党を問わず、返済不要の給付型奨学金の創設を唱える声が高まってきた。参院選を前に、初めて投票権を手にする若年層に向けて訴える狙いがあるのかもしれない。
 東京や愛知などの弁護士や大学教員、若者たちの奨学金問題対策全国会議は、給付型導入を選挙の争点にしようと声を上げている。

 いまや大学生らのおよそ四割は、日本学生支援機構を通じて国の奨学金に頼っている。親の収入の増える見込みが薄いのに、学費は上がる一方だからだ。
 大学の年間の授業料だけをみても、平均して私立は約八十六万円、国立は約五十四万円かかる。
 殊に国立は九万六千円だった四十年前の六倍近くに及ぶ。当時は九万円前後、いまは二十万円ぐらいの大卒初任給に照らせば、いかに高騰しているかがわかる。

 最大の問題は、国の奨学金には有利子枠と無利子枠の貸与型しかないことだ。有利子枠が約七割を占め、実質はローンである。
 社会に出てから収入が不安定な非正規雇用などに甘んじ、返済に窮する若者たちは多い。本紙の年頭連載「新貧乏物語」が紹介したように、風俗店で働いたり、自己破産したりするケースまである。
 滞納すれば、延滞金の上乗せはもちろん、個人信用情報機関のブラックリスト登録から強制執行まで取り立ては厳しい。将来の負担を嫌い、大学進学を諦めるという本末転倒の事態も生じている。

 国は、卒業後の収入に応じて返済額を増減する新しい奨学金を来年度から採用する。でも、債務を負うことに変わりはない。抜本的な救済策とはいえまい。
 就職先の見通しも立たないうちから、借金を余儀なくさせる仕組みが問題なのだ。返済の負担は結婚や出産に響き、少子化や人口減少の要因にもなっている。
 世界的にみて、日本は国内総生産に占める高等教育への公的支出割合が低すぎる。まずは給付型奨学金の実現をふくめ、未来のための教育財源を確保するべきだ。

本日の東京新聞朝刊から

本日の東京新聞朝刊の社説を引用してみたい。
東京新聞社として、辺野古に新たな基地を作ることなく、「日米同盟の抑止力」として嘉手納基地の有効性を認めつつ、普天間代替基地をグアムもしくは豪州ダーウィンに設けるという現実的な(妥協的?)な解決策を提示している。ぱっと評価してよいものかどうか判断はつかないが、根拠や道筋が明確で、極めて実現性が高い案として考察に十分に値すると考える。

週のはじめに考える 普天間代替基地は国外へ

 安倍政権は裁判所の和解案を受け入れ、沖縄県名護市辺野古での米軍基地新設工事を一時中断しました。「辺野古が唯一の選択肢」なのか考えてみます。
 新設工事は宜野湾市の市街地にある海兵隊の普天間飛行場を辺野古に移設するものです。和解案を受け入れた菅義偉官房長官は会見で「日米同盟の抑止力の維持と普天間の危険性除去を考えた時に、辺野古への移設が唯一の解決策である」と述べました。
 「危険性除去」を目指すなら、移設先は辺野古でなくてもよいはずです。「日米同盟の抑止力」は辺野古移設でなければ維持できないのでしょうか。

◆海兵隊の抑止力に疑問
 抑止力とは攻撃すれば耐え難い反撃を受けるとして、攻撃を思いとどまらせる機能のこと。そもそも沖縄の海兵隊は抑止力となっているのか疑問です。
 沖縄の海兵隊は一九五〇年代、岐阜県と山梨県の基地から移転してきました。当時の沖縄は米軍の施政権下にありました。米政府の狙いは日本各地に広がった基地反対闘争の沈静化にあり、抑止力の議論とは無縁でした。
 海兵隊は、地上部隊、航空部隊を海軍の揚陸艦と組み合わせて敵前上陸できる機動性、即応性に特徴があります。ところが、沖縄海兵隊の「移動の足」となる揚陸艦は長崎県の佐世保基地に配備され、大型輸送機は米本土に置かれていて、最初から機動性、即応性に欠けるのです。
 東西冷戦期こそ兵員は二万人を超えていましたが、二〇〇六年、日米合意した米軍再編によって海兵隊八千人がグアム島へ移転することが決まりました。沖縄県の資料によると、この年の海兵隊は一万三千四百八十人。定員一万八千人なので移転後に残る兵員は定員ベースなら一万人ですが、実員ならば五千人強となり、心もとない兵力となります。それでも移転は司令部などにとどまり、実戦部隊はそっくり残るはずでした。

◆海外移転する実戦部隊
 すると仰天の出来事がありました。日米は一二年、米軍再編を見直し、司令部を残すことにする一方で、実戦部隊の第四海兵連隊をグアムへ移転させ、第一二海兵連隊を国外へ移転させることにしたのです。合意の中身ががらりと変わり、実戦部隊の国外移転が決まったのです。
 これで沖縄に残る実戦部隊は兵員二千二百人の第三一海兵遠征隊(31MEU)だけ。31MEUはローテーションでアジア太平洋での訓練、洋上待機、休養を繰り返し、沖縄には年に数カ月しかいない部隊です。抑止力の維持はどうなったのでしょうか。
 結局、日本政府は米政府の打ち出す計画に追従しているだけではないのか。その証拠に「海兵隊は抑止力」と強調しながら、それが薄氷となっても気にするふうはなく、その一方で日米で合意した辺野古新基地計画にはしがみつく。軍事合理性からみて、支離滅裂というほかありません。
 米政府が辺野古新基地にこだわるのは、普天間飛行場になかった弾薬搭載エリアや揚陸艦が横付けできる岸壁を持ち、滑走路が一本から二本に増えるという格段に強化された基地だからです。米政府にも辺野古移転を断念してもらうにはどうすればよいのか。
 防衛省出身で安全保障担当の内閣官房副長官補だった柳沢協二氏は「31MEUの役割は、武力紛争における関連任務よりも、東アジアにおける人道支援・災害救援にある。アクセス拠点は沖縄でなくてもいい」と主張します。
 柳沢氏は31MEUをグアムもしくは海兵隊の新基地があるオーストラリアのダーウィンに移転させる構想を描きます。普天間代替基地は「日本のどこにも造らず、米軍の裁量に任せる。あえて挙げるなら空軍基地のあるグアム」といい、辺野古新基地建設に見込まれる日本の防衛費三千五百億円を、海外新基地の整備費用や海外移転に伴って必要となる高速輸送船などの購入費用に充てるべきだとの案を示します。
 抑止力は戦力を東アジアに投入する能力がある海軍、空軍で十分というのです。

◆移転費用は日本持ちで
 和解受け入れから三日後、政府は沖縄県に埋め立て承認取り消し処分の是正を指示しました。沖縄側は反発し、再び訴訟になりそうです。「日米同盟の抑止力」を考えるなら、対立を続けるべきではありません。空軍の拠点である嘉手納基地まで県民の批判の的になれば、抑止力が危うくなります。
 和解により、解決策を探る時間が生まれました。海兵隊のうち、すべての実戦部隊を普天間代替基地と一緒に国外へ移転させる、その代わり関連費用は日本側が負担する。米政府とぜひ議論してほしい実現可能な案と考えます。

「入試から小説が消える」

本日の東京新聞夕刊コラム「大波小波」より引用

 いとうせいこうの自作の教科書掲載拒否問題が先日来本欄で取り上げられているが、もちろん作者に自作の表現に関する全権があるにせよ、教科書と文学の問題にはもう少し配慮が払われてよい。
 「保守派」氏は教科書は「評価の定まらぬ当世風の文学よりも、日本語の規範とすべき文学を優先して掲載すべき」だと言うが、文豪の文章は生前から教科書に採られていた。それによって教科書が「評価」や「日本語の規範」を定めてきた。生きている間に載らなかった作家が、死後突然評価され、教科書に掲載されることの方が珍し。だからこそ、教科書によい作品を載せたいと編集者は苦心する。現在進行中の教育改革によって高校国語教科書は大きく変わろうとしているのをご存知だろうか。高校二・三年の「現代文」を「実用国語」と「文学国語」に分け、選択制にするというのだ。そしてセンター試験の後継テストから小説は姿を消す。
 これによって入試から解放される文学が、教室で「正解」に囚われず、より自由に羽ばたく可能性が出てきたとは言えるが、入試から外された選択科目として「文学国語」は生き残れるだろうか。やがて教科書での出会いのなくなった文学そのものは…。(懐疑派)