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「ミンダナオでの自治政府認める」

7月29日付の東京新聞朝刊国際面に、フィリピンのドゥテルテ大統領が、南部ミンダナオ島にイスラム自治政府の樹立を認める「バンサモロ基本法」に署名し、成立させたとの記事が掲載されていた。約50年にわたる政府とイスラム系武装勢力との紛争は、和平に向けて一歩前進することになった。
バンサモロは「イスラム教徒の国・地域」を意味し、基本法はミンダナオ島にあるイスラム自治区を廃止し、自治政府に予算編成や独自の議会など高度な権限を認める内容となっている。年内にも自治政府への参加を問う住民投票を自治体ごとに実施し、2022年に自治政府が発足する見通し。

フィリピンというと歴史的にカトリックというイメージが強い国である。9割近いキリスト教徒の国の中においてイスラム系住民の自治政府を認めるというのは勇断である。アキノ前政権時代に包括和平協定に調印し、基本法成立を目指す流れがあり、ミンダナオ島出身のドゥテルテ大統領が法成立に意欲を示していたとのこと。今回の和平プロセスに加わっていないイスラム過激派も存在し、同島中部マラウイでは現在も戒厳令が敷かれたままとなっている。しかし、交渉過程も含めて高度な自治政府の理想形として世界にアピールできれば良いと思う。

 

ミンダナオ和平
フィリピン南部ミンダナオ島では、マルコス政権が1960年代後半からイスラム教徒の弾圧を強め、イスラム勢力は70年代初めにモロ民族解放戦線(MNLF)を結成、武装闘争を始めた。MNLFは96年に和平に合意したが、分派したモロ・イスラム解放戦線(MILF)が戦闘を続行。MILFは97年から政府と和平交渉を始め、2014年に包括和平に合意した。(共同)

「東京五輪学生ボランティア催促通知」

8月1日付東京新聞朝刊「こちら特報部」に、文科省とスポーツ庁が東京五輪・パラリンピックのボランティアへの学生の参加を促すため、全国の大学と高等専門学校に授業や試験期間について「適切に対応」するよう求める通知を出したことへの疑問のコラムが掲載されていた。
五輪開催中に10万人を超える規模のボランティア活動に学生が参加できるように、大学に日程調整を求めており、既に首都大学東京や国士舘大学では授業や試験日程の変更を決定している。

こうした状況について、7月22日に東京・渋谷での五輪返上を訴えるデモに参加した一人、一橋大の鵜飼哲名誉教授は次のように案じる。

最近は東京五輪の開催について、反対という声が言えない空気が色濃くなっている。その同調圧力が怖い。全国の大学や高専に五輪ボランティアを学事暦に優先するような通知を出すのは、戦中の「学徒動員」を想起させる。五輪の経済効果を32兆円とはじく一方、若者を炎天下でただ働きさせることの異常さを無視ししている。
労働力も資金も資材も五輪のために奪い、福島の復興を妨害しているのに、福島から聖火ランナーをスタートさせる。被災地の人々は、そうした「支援」に「感謝させられる」。現政権は原発事故の悲惨を隠し、改憲を済ませ、天皇も代替わりした新生国家をアピールする場としての東京五輪をイメージしている。
このまま進んでいけば、20年東京五輪は間違いなく、かつてのベルリン・オリンピックにもっとも近い五輪になるだろう。

ファシズムに詳しい京都大の池田浩士名誉教授の著した「ヴァイマル憲法とヒトラー」などによれば、1933年に誕生したナチス政権は「自発的労働奉仕(ボランティア)」を推奨した。自国が窮状から脱出するには国民の社会貢献精神の発揮が必要と説かれ、青年らは次第にそれを義務であるとともに、誇りを感じるようになったという。
これは後に「帝国労働奉仕制度」として義務化される。この労働奉仕により、アウトバーン(高速道路)やオリンピック・スタジアムが建設された。さらに、この労働奉仕でもうけた土木建設業や重工業産業は正規労働者を多く雇うようになり、一時は4割を超えていた完全失業率は激減、政権への求心力を高めた。強制や抑圧ではなく、人びとの自発性や社会性に基づく奉仕を通じ、民族共同体への帰属意識を強化した点が特徴だという。

「豪でLNG生産開始」

昨日まで読めなかった新聞をまとめて読み返している。
7月30日土曜日の夕刊に、国際石油開帝石がオーストラリア北西部で液化天然ガス(LNG)の生産を開始したとの記事が掲載されていた。海外の天然ガス開発で、日本企業が初めて開発全体の指揮を務め、年間約900万トンの生産量のうち約7割が日本向けで、関西電力や東京ガス、大阪ガスなどに供給が予定されている。
オーストラリアは日本にとって最大のLNG輸入元で、複数の大型プロジェクトが相次いで始まっている。オーストラリア政府は、2020年までに輸出量が7,700万トンまで増えると予想している。

再生可能エネルギーだけで電力を賄うことが可能になる2030年くらいまでは、比較的エネルギー効率の高い液化天然ガスに頼るというのが得策だ。政治動向に左右されやすいロシアよりもオーストラリアに頼るというのも良いと思う。記事には出ていなかったが、サンゴ礁を傷つけることがないような配慮が求められる。

国際石油開発帝石(INPEX)
日本最大手の石油・天然ガス開発会社。2006年4月、国際石油開発と帝国石油が経営統合し、共同持ち株会社「国際石油開発帝石ホールディングス」が発足。両社と共同持ち株会社が合併して08年に国際石油開発帝石が発足した。東証1部上場で、筆頭株主は経済産業相。アブダビ沖などに原油の開発権益を持つ。(共同)

「強権フン・セン与党 中国が後ろ盾」

本日の東京新聞朝刊に、東南アジアで通商・安全保障上の戦略的要衝に位置するカンボジアの総選挙の模様が報じられていた。
記事によると、最大野党を解党に追い込んだり、マスコミに圧力をかけたりするフン・セン首相率いる与党「人民党」の圧勝が確実な情勢とのこと。フン・セン氏はもともと中国の援助のもと、1970年代に推定170万人の命を奪ったポル・ポト政権の軍司令官を務めた人物であり、1993年の民主化以降も、政権の座に居座り続けている。
「一帯一路」経済圏構想を進める習近平政権にとって、海に抜けるカンボジアは戦略的に重要で、投資や援助を惜しまない。また軍事面でも関係を深め、南シナ海で問題では中国寄りの立場を示し、16年には初の合同軍事演習も行っている。ウィキペディアによると、解党に追い込まれた最大野党の「救国党」に対して中国のサイバー攻撃がなされているそうだ。

旧ソ連でワルシャワ条約機構に加盟していた衛星国家や、南米における米国と結託した軍事政権を思い出させるような話である。今どきこんな時代錯誤な政治体制があったのかとびっくりである。先日、紅海の入り口のマンダブ海峡に面したアフリカ・ジブチ共和国に中国が基地を建設したとの報道もあったが、いよいよ「一帯一路」戦略が、構想段階を終えて、経済・軍事の両面で中央アジア、東南アジア、南アジア、中東、アフリカを制圧下に置こうとする中国の動きが表立ってきた。大変地域が広いだけに、細かい記事に注目していきたい。

「再生エネで地域復興を」

本日の東京新聞朝刊に、太陽光を中心に小水力や風力発電にも取り組む会津電力の佐藤弥右衛門社長のインタビュー記事が掲載されていた。佐藤氏は次のように語る。

 日本人は事故の影響の大きさを身をもって知ったのだから「原発ゼロ」が政策の出発点のはずです。実際、原発が全て止まっても深刻な停電は起きていません。大手電力が苦しくなるから原発を稼働するというのは本末転倒です。

さらに、再生エネルギーのありかたについて次のように語る。

 再生エネを盛り上げることで地方を自立させるという視点が忘れられています。これまで地方の原発や巨大なダムを使い、大規模集中型で発電した電気が都会に送られてきました。福島県はその典型です。豊かな自然が搾取される代わりに補助金が配られる植民地型構造で、地方の中央頼み体質も助長しています。

太陽光などの再生エネルギーは地元の発電会社や家庭でも発電でき、地域ごとに電気を自給自足する小規模分散型。自然の恵みは地域に還元され、雇用も生んで復興や自立を促します。会津電力も5年で発電所が77カ所の増え、従業員も若い人を中心に約20人に増えました。

「大規模集中型」は1カ所の発電所が事故を起こすと停電の影響が広域に及美ます。「小規模分散型」は地域内の無数の小さな発電基地が送電線で結ばれ、電気を融通し合う仕組みなので、1カ所が事故を起こしても全域での停電はありません。ドイツなどでは送電ネットワーク技術の進展でこれが実現しています。日本では大手電力保護が優先され、世界で当たり前のことをやろうとしません。

佐藤氏の「本末転倒」という言葉が印象に残る。ここ数年のエネルギー政策はまさに「本末転倒」である。コストのかかるリスクの大きい原発を優先し、コストもリスクも小さい再生エネルギーは普及させまいとあの手この手で妨害にかかる日本政府のあり方そのものを表している。