漫画」カテゴリーアーカイブ

『神々の山嶺』

夢枕獏原作、谷口ジロー作『神々の山嶺(神々のいただき)』(集英社ヤングジャンプコミックス 2016)全3巻を一気に読む。
山に魅せられ山を追い続ける根っからの山屋である羽生丈二と、羽生の生き様を追いながら自分の生き方を見つめるカメラマン深町誠の2人の男が、真冬に誰も成功したことがないルートで世界最高峰のエベレストを無酸素登攀で挑む。
圧倒的な画力で、最後は読んでいるこちらまで高山病に罹ったような疲れまで出てきた。

『PLUTO』

浦沢直樹×手塚治虫『PLUTO』(小学館ビッグコミックス 2004)全8巻を読んだ。
手塚氏の『鉄腕アトム』の長編ストーリー作品「地上最大のロボット」のリメイクである。
全8巻のうち、7巻くらいまでは一体どういう背景なのだろうと、謎が謎を呼ぶ展開で一気にページを繰っていった。
最後の8巻で合点が行くのだが、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」となってしまい、いささか尻すぼみな結末であった。しかし、手塚氏も指摘していたであろう大義なき戦争の闇や近未来社会の歪みが描かれており、大作の持つスケール感を堪能することができた。

『ノーマン』

手塚治虫『ノーマン』(秋田文庫 1995)全2巻を読む。
アポロ11号が月面に着陸する前年の1968年に「週刊少年キング」に連載された、月の世界の住人と異星人の戦争をテーマにした少年漫画である。週刊漫画だからなのか、話の展開が早すぎて、一人ひとりの登場人物が描ききれておらず、あまり面白くなかった。

『この世界の片隅に』

第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社 2009)を読む。
先月増刷(2016年12月第16刷)されたばかりの新刊である。全3巻を一気に読み終えた。
2007年から2009年にかけて『漫画アクション』に連載された漫画である。原爆投下前後の広島・呉で平凡ながらも健気に生きる北條すずの生活が描かれる。特に意図的に感動を催すような場面はないのだが、読み終えた後にじわじわと心の底から感動が沸き起こってきた。誰かに薦めるというよりも、これからも心の中で密かに大切にしたい作品である。

『ザ・クレーター』

手塚治虫『ザ・クレーター』(秋田文庫 1994)を読む。
1969年から1970年にかけて、「少年チャンピオン」に連載された短編作品である。話の内容も、地域、時代も全く異なるが、ほぼ全ての作品でオクノリュウイチなる青年男性が主人公として登場し、人生の不条理なるものが様々に形を変えて語られる。
その中に死んだ女性が同年代の男性の心と入れ替わる『オクチンの奇怪な体験』という話がある。男性トイレに女性の心のままで入ってしまい恥ずかしがるシーンや、外見は活発な男の子なのに行動はお淑やかな女の子なので周囲の誤解を招くシーンなど、ちょうど先日見た『君の名は。』に設定が良く似ていた。手塚治虫氏が卓越しているのか、新海氏が参考にしたのかは不明だが、他の作品も含め、生死の境目や、人生の選択、記憶の不思議というものを考えさせる内容であった。