漫画」カテゴリーアーカイブ

『鉄コン筋クリート』

松本大洋『鉄コン筋クリート』(小学館 1994)全3巻を一気に読む。
最初は空を跳んだり他の町から流れ着いた敵をやっつけたりと、まさにマンガ的な展開をするのでギャグ漫画かと思っていたのだが、段々と話はシリアスになっていき、最後は話のスケールがぐんと大きくなって元に鞘に戻っていく。
天童荒太の『永遠の仔』のような哀しい味のする作品であった。

『ヘルタースケルター』

岡崎京子『ヘルタースケルター』(祥伝社 2003)を読む。
全身の全てを整形することで全く新しい人生を手に入れた女性モデルりりこの活躍を描く。物語の始まりから悲劇の結末を予感させており、漫画を読み慣れないながらも一気に読んでしまった。キレイに可愛く変身したいという飽くなき女性の願望の危うさがうまく表現されていた。

『攻殻機動隊』

士郎正宗原作・押井守監督『攻殻機動隊:GHOST IN THE SHELL』(講談社 1995)を読む。
1995年に公開された押井守監督の同名映画のアニメコミックである。劇場で上映に使用しているものと同じ35ミリフィルムを素材として使用し、全シーン、全カット、全セリフの収録・構成を心がけたオールカラーの漫画となっている。
「自分が疑いようもない自分である」というアイデンティティは自分ならしめてきた各人の「記憶」に根ざすものであるが、その記憶が外部に記憶され別の肉体で再活用されたり、他者により改変を加えられたりして、自分が本当に自分であるという確証が持てない近未来の恐怖を描く。
かなり複雑な世界観を持った作品であり、10数年前だったが、この次回作の映画を観たのだが訳が分からず仕舞いだったのも頷ける。

『神々の山嶺』

夢枕獏原作、谷口ジロー作『神々の山嶺(神々のいただき)』(集英社ヤングジャンプコミックス 2016)全3巻を一気に読む。
山に魅せられ山を追い続ける根っからの山屋である羽生丈二と、羽生の生き様を追いながら自分の生き方を見つめるカメラマン深町誠の2人の男が、真冬に誰も成功したことがないルートで世界最高峰のエベレストを無酸素登攀で挑む。
圧倒的な画力で、最後は読んでいるこちらまで高山病に罹ったような疲れまで出てきた。

『PLUTO』

浦沢直樹×手塚治虫『PLUTO』(小学館ビッグコミックス 2004)全8巻を読んだ。
手塚氏の『鉄腕アトム』の長編ストーリー作品「地上最大のロボット」のリメイクである。
全8巻のうち、7巻くらいまでは一体どういう背景なのだろうと、謎が謎を呼ぶ展開で一気にページを繰っていった。
最後の8巻で合点が行くのだが、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」となってしまい、いささか尻すぼみな結末であった。しかし、手塚氏も指摘していたであろう大義なき戦争の闇や近未来社会の歪みが描かれており、大作の持つスケール感を堪能することができた。