白籏史朗『山と写真 わが青春』(岩波ジュニア新書 1980)をパラパラと読む。
刊行当時47歳の著者が、山岳写真家として食っていけるまでの過去半生が綴られている。1933年生まれということもあり、中学卒業後から働き続ける。山に対する憧れを抱きつつも、スタジオ写真や写真の現像、新聞の写真部など、自分の夢に近づいていかない苛立ちが描かれている。ようやく30代に入ってから少しずつ山の写真を撮る仕事に触れるようになった。著者はそうした長い下積み時代を「青春」と呼ぶ。
「読書」カテゴリーアーカイブ
『日本語が見えると英語も見える』
荒木博之『日本語が見えると英語も見える:新英語教育論』(中公新書 1994)をパラパラと読む。著者は広島大学や立命館大学で英文学や比較文化論を教えていた教授である。本書は著者の専門分野に関するエッセーのような内容であった。「さらさらした雪」「とろとろしたスープ」などのオノマトペが英語に訳しにくい理由や、電話口での「弟と代わりますから」というやりとりが会話主の「I 」もなければ電話相手の「you」すら省略されてしまう事例が紹介されている。日本語の曖昧さというか、日本語の持つ独特な力について論じられている。
『敬語』
坂詰力治『敬語:思いやりのコミュニケーション』(有斐閣新書 1985)をパラパラと読む。
著者は執筆当時東洋大学文学部で国語学を教授する研究者であった。著者は敬語について「伝達内容を直接表すものではなく、情報伝達の授受に関わる人間関係に応じて行われるもの」とし、「人間関係のわきまえをもとにした言語表現」であると定義づけている。本論は実例ばかりだったので、さっと読み飛ばした。
『あるキング』
伊坂幸太郎『あるキング』(徳間書店 2009)を読む。
仙台を本拠地とするセリーグのプロ野球チームをモチーフとしたファンタジー小説である。
伏線というか、作者によって明示されている伏線が多数あり、それらが回収されながら物語が進んでいくので、途中から読むのをやめられなくなった。
『「見えざる手」が経済を動かす』
池上彰『「見えざる手」が経済を動かす』(筑摩書房 2008)を読む。
先日読んだ細野真宏さんの本より歴と分かりやすかった。アダムスミスの「見えざる手」である「市場原理」が、基本的に社会を良い方向に変えてきたという論点に立っている。東ドイツの経済の停滞や国鉄、郵便業務、電電公社などの改革が、国民に利便性をもたらした背景について分かりやすく説明されている。一方で、アメリカの医療保険制度や日本のタクシー業界など、新自由主義の行き過ぎが社会に混乱をもたらした点についても丁寧に触れられている。