本日の東京新聞朝刊に、気候変動を受けてコメやブドウ、ナシなどの国内農作物の高温対策が本格化しているとの記事が掲載されていた。幸い日本は南北に長い国なので、水温管理や害虫駆除、品種改良等で、適応策は比較的取りやすい。日本の米は主に冷害対策を視野に品種改良を行ってきたので、高温対策の歴史は浅い。しかし、高温に強い品種は数多くあり、いずれは九州のブランド米が北海道で生産されるのであろう。
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「欧州酷暑」
本日の東京新聞朝刊に、南欧スペインで最高気温が45度を超えて、山火事が頻発しているとの報道があった。地理の先生っぽく解説を加えてみたい。ちょうど1学期の期末考査で出題したとこである。
地中海周辺は夏に亜熱帯高圧帯が北上してきて高圧帯に覆われるCs気候区分に位置する。スペイン内陸の首都マドリードの雨温図を見ると分かるが、夏になると、ひと月の降水量が10mm程度にまで低下する。埼玉の1月の降水量が50mmほどなので、その少なさが何となく理解できるであろう。そのため、地中海周辺では夏に、皮の厚いオリーブやレモン、オレンジ、もしくは水分をたっぷりと蓄えたブドウやトマトが生産されている。
ちなみに、マドリードは7・8月の平均気温が22度を超えるため、大学レベルのケッペンの気候区分では、最暖月22度以上のaを加えて、Csaと表記される。
一方の日本だが、先日7月12日夕方から13日未明にかけ、埼玉県内では猛烈な雨が降った。埼玉県・鳩山町では、12日午後10時半までの6時間の降水量が観測史上1位となる360ミリに達っした。これは平年の7月1か月間に降る雨の2倍以上にあたり、 川が増水し、車が流されたり、家屋が床上浸水する被害も出た。特殊な事例だが、スペインの年間降水量が400mmを超える程度なので、ほぼ半日でスペインの1年分の降水量を記録したことになる。
こうした地中海性気候は北緯・南緯40度付近で、偏西風の影響を受ける大陸の西側のみに位置する気候区分である。地中海周辺だけでなく、北米大陸の西側やアフリカ大陸南端、オーストラリア大陸南西部、南米大陸の南緯30-40°付近にもある。
「スリランカ大統領 国外脱出」
本日の東京新聞朝刊に、スリランカ情勢の続報が掲載されていた。
デモが激化しているスリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が近隣のモルディブに脱出したとのこと。
モルディブの面積は298平方キロメートルで、東京23区の約半分である。1192の環礁(サンゴ礁)の島々からなり、そのうちの145島がリゾート島となっている。人口は55.7万人で、観光がGDPの26.3%を占める。赤道が近いため、水産業では暖海性魚類のカツオやマグロが主な輸出品である。コロナ以前は観光業で財政が潤っていたため、一人当たりのGNIは9,640米ドル(2019年世銀資料)となっている。
伝統的な親日国でもあり、日本が最大規模の二国間援助供与国となっている。モルディブと日本の外交ルートを通じてスリランカ大統領が日本に亡命してくる可能性も出てくるかしれない。
「世界の人口 年内80億人」
本日の東京新聞朝刊に、世界の人口が今年の後半には80億人に達するとの記事が掲載されていた。さらに、2023年にはインドが人口減少に向かっている中国を抜いて世界最多になるとの見通しが示されている。
日本や韓国などの東アジアや欧州では人口減少が続いているが、世界ではアフリカを中心に、南アジアや南米など人口が増加している地域が多い。近年は人口増加のペースが下がったとはいえ、年間1億に弱の人口増加が続いており、食糧だけでなく、エネルギーや居住など多くの問題が噴出している。
一般的に先進国では人口減少、開発途上国では人口増と色分けされる。しかし、先進国の少子化も開発途上国の人口爆発も一筋縄に解決できる問題ではない。夏休みの宿題のテーマにも人口問題が入っているので、ぜひどこかの国の人口増加(減少)の実態と背景、そして打開に向けた取り組み、自分の提言などをまとめてほしい。
本日の東京新聞朝刊記事より。
インドの南東部に位置するスリランカで、経済危機の抗議デモが広がり、ついにゴタバヤ・ラージャパクサ大統領辞任が辞任という事態を迎えた。記事によると中国などから借り入れた多額の債務負担や国民受けを狙った減税に加えて、新型コロナウイルスの拡大で観光業が大打撃を受け、輸入に頼る食料や燃料が不足し、価格高騰が市民生活を直撃している。
記事の下に地図を付けたが、スリランカは中国の「一帯一路」経済圏構想の中核に位置付けられている。「一帯」は中央アジアを経由して欧州へ至る現代版シルクロード、「一路」とはインド洋を経由してアフリカ、欧州へ至る市場ルートである。中国はインド洋の支配に向けて、大国インドの喉に刺さった魚の骨のように、スリランカへの投資を続けてきた。
昨年の授業で紹介した、名古屋入管で死亡したウィシュマさんもスリランカの出身である。2019年の爆破テロ事件から、スリランカ経済は大きく下落しており、観光業は下火となっていた。2020年の新型コロナウイルスの感染拡大がそれに追い討ちをかけたが、現政権の失政こそが大きな要因となっている。
スリランカは資源に乏しく、輸出産業は繊維などの軽工業のみである。セイロンティーが有名であるが、昨年ゴタバヤ・ラージャパクサ大統領が「100%有機農業政策」という馬鹿げた政策を打ち出したため、スリランカ国内の農業が大混乱に陥っている。現在は化学肥料の輸入再開に踏み切ったようだが、世界的なドル高のために調達がうまくいかず、国内の食糧事情も悪化している。
日本は中国に次いで、スリランカの援助国となっており、2021年10月現在、日系進出企業は107社を数え、貿易額は約666億円(2021年)で、スリランカにとって重要な貿易相手国(輸入は第7位、輸出は第11位)となっている。日本がこれからスリランカにどのように対応していけるのか。ウィシュマさんの事件を教訓としたい。