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「英EU離脱から3年 「国境制御」裏目、不法移民4万人超」

本日の東京新聞朝刊に、「英EU離脱から3年」と題した連載コラムに、EUから離脱して以降、逆に英国で不法移民が増加しているとの記事が掲載されていた。

イギリスとフランスを隔てるドーバー海峡は、最狭部で34kmという短い距離だが、偏西風と北大西洋海流の影響を受け、潮流が早いことで知られる。実際に泳ぐと距離は50kmとも60kmともいわれる。

記事によると、シェンゲン協定から離れ再び国境制御を強化した英国で、海峡を越えて不法侵入する移民が4万人を越えたという。そうした状況の中で、識者の「政府が合法的な難民の受け入れを閉ざせば閉ざすほど、不法ルートで危険な海を渡る人は増える」ため、「政府の強硬策は危機を創り出しているだけだ。合法的な受け入れの拡大に政策を転換すべきだ」との指摘は両手を挙げて賛成である。日本も対岸の火事では済まされない。今から、多様性を受け入れる視野と寛容性を持った若者を育てていきたい。

「鶏卵王国厳戒」

本日の東京新聞朝刊に、鶏卵生産量の第1位の茨城県と同第2位の千葉県で、相次ぐ鳥インフルエンザや飼料高騰で経営不安が広がっているとの記事が掲載されていた。

考えてみれば、なぜ鶏卵の生産量は茨城と千葉がトップで、同じ首都圏近郊の埼玉や栃木、群馬がランキング上位にも入っていないであろうか。
ネットで検索したところ、鶏は夏場の暑さに弱いので、毎年最高気温を記録する熊谷や館林がある埼玉県や群馬県は、飼育が難しい地域とされるそうだ。また、関東の飼料工場は茨城県神栖市に集中しており、千葉県や茨城県へ飼料を運びやすいことも養鶏が盛んになった背景と考えられるとのこと。以前は神奈川県や越谷市など埼玉県南部にも養鶏の盛んな地区があったが、宅地化の波に飲まれ次々に廃業に追い込まれている。そして、大規模な養鶏場があった茨城県や千葉県が関東の養鶏を支えている状況となったようである。

「中国偵察気球 中南米にも」

本日の東京新聞朝刊に、中国の米国上空に現れた中国の偵察気球の飛行ルートが図示されていた。ちょうど北緯35度から60度付近を帯状に蛇行しながら吹く偏西風に沿っていた。少し解説を加えると、地球は地軸が23度傾いているので、夏は気候帯が大きく北上する。それに伴い偏西風も高緯度地域に追いやられてしまう。一方冬は気候帯が南下するため、偏西風の活動域が広がり、風力も強くなることが知られている。また、偏西風は別名ジェット気流とも呼ばれ、航空機が飛ぶ高度12,000メートル付近を流れ、秒速100mにも達し、航空機の運行にも影響を与えている。

今回の中国から飛ばされたとされる気球は、冬の強い偏西風に乗って米国本土まで飛んで行ったと考えられる。この発想は戦前の日本軍が採用しており、1944年から45年の冬に風船に時限爆弾を積んで、ジェット気流を利用して太平洋を越えて米国本土を直接攻撃する風船爆弾なるものを実戦投入していた。実際に9,000発飛ばしたうちの1,000発ほどが米国に到着したとのことである。

「春節の旅行者

本日の東京新聞朝刊に、今年の中国の1月の観光客がコロナ以前の9割弱にまで回復したとの記事が掲載されていた。日本は2010年代の10年間で観光客が5倍にまで増加している。2019年には3200万人と過去最高を記録している。そのうちの3分の1弱が中国からの観光客となっている。爆買いなどの言葉が流行語となったほどである。しかし、コロナ以降激減し、2021年は24万人にまで落ちこんでいる。コロナが落ち着きを見せている今年こそ、日本の観光業界のみならず、イベントやスポーツなども元通りに戻ってほしい。

「ユダヤ礼拝所銃撃 7人死亡」

本日の東京新聞朝刊に、エルサレムでパレスチナ人の若者がユダヤ礼拝所を銃撃したとの記事が掲載されていた。ちょうど地理総合の授業で取り上げたばかりなので、少し解説を加えたい。

授業でも説明した通り、エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3つの宗教の聖地となっており、国際連合はどこの国にも属さない都市だとしている。そのため日本を含む世界のほとんどの国は、イスラエル国内の大使館を地中海に面したテルアビブに置いている。しかし、米国だけは2017年に駐イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移している。つまり、エルサレムこそがイスラエルの首都だというイスラエル政権の主張を認めたことになっている。米国の軍事的支援もあり、イスラエルはかつてないほどの軍事国家となっている。

授業中にも触れたが、イスラエル国家の視点に立てば、テロを行ったパレスチナ青年は加害者で、礼拝所を銃撃されたユダヤ教徒は被害者である。しかし、パレスチナ人の視点から見ると、圧倒的な軍事力をもってパレスチナ人の暮らしそのものを破壊するイスラエルこそ加害者である。地図帳や世界史の知識を生かして、多様な視点を持つことが高校地理には大切である。

また、イスラエルは地中海に面しており、夏は亜熱帯高気圧にすっぽりと覆われるので、6〜8月の降水量は0mm、9月も0.3mmと砂漠並みに降雨がない。地球の動きも合わせて理解しておきたい。