谷川彰英『地名に隠された「東京津波」』(講談社+α新書,2012)を読む。
東日本大震災が起こった2011年に執筆された本である。1923年の関東大震災は小田原沖の内陸直下型地震であったため、幸い東京湾が津波に襲われることはほぼなかった。しかし、伊豆・小笠原海溝付近で海溝型地震が発生し、7〜8メートルの津波が東京23区を襲った際に、どこが浸水するのかというシミュレーションとなっている。
大正14(1915)年に刊行された「東京市高低図」をもとに、上野や後楽園、高田馬場、市ヶ谷、恵比寿m、五反田、谷根千地域など、海抜10メートル以下の被害予想が詳細に解説されている。東京都区部は西側は標高20〜30メートルの洪積台地である武蔵野台地が広がっており、津波の心配はまったくない。しかし千葉県側の下総台地に挟まれた東京都区部の東側は沖積平野であり、津波の被害をもろに受けてしまう。本書では特に、山とか丘という地名が多い山の手と橋や川という地名が多い下町を結ぶ周縁部を中心に取り上げらている。
こうした場所は縄文海進の際の波食台に位置している。ちなみに「海進」とは「海が陸地の奥に進む」ことを意味しており、その反対を「海退」と呼んでいる。
海抜ゼロメートル地域が広いのは以下の順番となっている。
- 愛知県…370平方キロメートル
- 佐賀県…207平方キロメートル
- 新潟県…183平方キロメートル
- 東京都…124平方キロメートル
上記のうち、愛知県は木曽川・長良川・揖斐川が合流する濃尾平野を抱えており、輪中で知られているのですぐにわかる。佐賀県と新潟県は意外であった。
東京江戸川区に小松川という町名があるが、かつての小松川という川が流れていたそうであるが、現在は不明となっているが、かなり大きな川であったようだ。その下流域で栽培され有名になったものが「小松菜」である。